AQUALUNG / アクアラング

AQUALUNG

Aqualung
  1. Aqualung / アクアラング
  2. Cross=Eyed Mary / クロス・アイド・マリー(やぶにらみのマリー)
  3. Cheap Day Return / 失意の日は繰り返す
  4. Mother Goose / マザー・グース
  5. Wond'ring Aloud / 驚嘆
  6. Up to Me / アップ・トゥ・ミー
My God
  1. My God / マイ・ゴッド
  2. Hymn 43 / 讃美歌43番
  3. Slipstream / 後流
  4. Locomotive Breath / 蒸気機関車のあえぎ
  5. Wind Up / 終末

Remastered Edition Bonus Track
  1. Lick Your Fingers Clean / リック・ユア・フィンガーズ・クリーン
  2. Wind Up (quad version) / 終末(クォッド・ヴァージョン)
  3. Excerpts from The Ian Anderson Interview / イアン・アンダーソン・インタヴュー(抄録)
  4. Song For Jeffrey / ジェフリーへ捧げし歌(BBCセッションズ)
  5. Fat Man / ファット・マン(BBCセッションズ)
  6. Bouree / ブーレ(BBCセッションズ)

40th Anniversary Special Edition
CD1 - New Aqualung Stereo Mix
CD2 - Additional 1970 &1971 Recordings include some Previously Unreleased New Stereo Mixes
  1. Lick Your Fingers Clean (New Mix)
  2. Just Trying To Be (New Mix)
  3. My God (Early Version)
  4. Wond'ring Aloud (13th December 1970)
  5. Wind-Up (Early Version - New Mix)
  6. Slipstream (Take 2)
  7. Up The 'Pool (Early Version)
  8. Wond'ring Aloud, Again (Full Morgan Version)
  9. Life Is A Long Song (New Mix)
  10. Up The 'Pool (New Mix)
  11. Dr Bogenbroom (2011 - Remaster)
  12. From Later (2011 - Remaster)
  13. Nursie (2011 - Remaster)
  14. US Radio Spot
40th Anniversary Collector's Edition
CD1&2 - Same as 40th Anniversary Special Edition
DVD - 5.1ch Mix, New Stereo Mix and Quad Mix of All Tracks of CD1&2 except "US Radio Spot"
Blu-ray - 5.1ch Mix, New Stereo Mix, Quad Mix and Original Mix of All Tracks of CD1&2 except "US Radio Spot"
LP - New Aqualung Stereo Mix

All songs are written by Ian anderson except:
"Aqualung" written by Ian Anderson/Jennie Anderson
"Bouree" written by John Sebantian Bach and arranged by Ian Anderson
Orchestra arranged & conducted by David Palmer


40th Anniversary Collector's Edition (2CD, DVD, Blu-ray, LP and Booklet)

40th Anniversary Special Edition (2CD/MP3)

1996 Remasterd Edition


Information

概要
1971年リリース。"アクアラング"、"蒸気機関車のあえぎ"、"やぶにらみのマリー"などの代表曲が詰まっており、全世界でベストセラーとなった歴史的名盤。暖かなアコースティック小曲群や社会問題、宗教を取り扱った歌詞も見逃せない。全英第4位/全米第7位。

リリース年/英米チャートアクション
オリジナル---1971年。全英第4位/全米第7位。
リマスター---1996年。
コレクターズエディション---2011年。

アルバム種別
スタジオ盤

メンバー
AQUALUNG: #4 1971
Vo,Flute,G etc. G B,Vo Ds Key
Ian Anderson
イアン・アンダーソン
Martin Barre
マーティン・バー
Jeffrey Hammond-Hammond
ジェフリー・ハモンド=ハモンド
Clive Bunker
クライヴ・バンカー
John Evan
ジョン・エヴァン
Morgan Studio Early Recordings: #3 1970
Vo,Flute,G etc. G B Ds Key
Ian Anderson
イアン・アンダーソン
Martin Barre
マーティン・バー
Glenn Cornick
グレン・コーニック
Clive Bunker
クライヴ・バンカー
John Evan
ジョン・エヴァン

オリジナルアルバムレコーディング情報
プロデューサー --- Terry Ellis and Ian Anderson
エンジニア --- John Burns
スタジオ --- Island Studio, London

評価
-- Highly Recommended !


Review

モーガンスタジオレコーディング
デビュー以来3枚のアルバムがセールス的に成功し、全米ツアーも好評だったJETHRO TULL / ジェスロ・タルはまさに上り調子にあった。バンドは1970年6月にモーガンスタジオに入りニューアルバムのレコーディングを開始する。エンジニアは気心の知れたRobin Black(ロビン・ブラック)だったが、"Just Trying To Be""Wond'ring Aloud, Again""My God"の3曲をレコーディングできただけでツアーに入った。ツアーではこの中から先行して"My God"がプレイされた。実はニューアルバムのタイトルはMY GODの予定で、まさに目玉となることを期した曲だったのだ。このツアーも、英国ではワイト島フェスティバルに出演し、米国ではカーネギーホールでチャリティライヴを実施するなど大盛況であった。しかし、ツアーを通じてリーダーのIan Anderson(イアン・アンダーソン)には大きな不満が芽生えていた。

メンバーチェンジ:ベーシストの交代
全米ツアー終了をもって、Ian Andersonにライフスタイルを疎まれたベーシストのGlenn Cornick(グレン・コーニック)が突然解雇される。そしてAndersonが選んだ次なるベーシストは、元JOHN EVAN BAND / ジョン・エヴァン・バンド初期のベーシスト、Jeffrey Hammond(ジェフリー・ハモンド)だった。"A Song for Jeffrey"等、TULLの曲タイトルでなじみのあった親友である。Cornickは次のようなことを語っている。
「Jeffreyが後任だったので、俺が解雇された理由は俺のプレイではないということが分かった。」
そう、Jeffrey Hammondはベースがロクに弾けなかった。しかしIan Andersonが気心を許せる数少ない友であった。加入にあたってJeffrey Hammond-Hammondと複合姓の芸名としたが、実は両親ともにHammond姓でありジョークである。Hammondは楽典の知識がまるでないため、Andersonはハミングで歌ったり自ら弾いたりしてHammondにベースラインを教えたという。
Glenn Cornickはこの後WILD TURKEY / ワイルド・ターキーを結成、解散後はBob Welch(ボブ・ウェルチ)等とPARIS / パリスを結成したりするものの商業的成功をおさめることが出来ず、米国に移住し音楽界から離れた。90年代に入ってWILD TURKEYを再結成するが、やはり経済的に苦しく、現在は活動停止中である。

レコーディング
TULLは、アイランド・レコードが新設した、ベイジング・ストリートにあるアイランド・スタジオに入った。プロデュースは、Terry Ellis(テリー・エリス)がクリサリス・レコードの設立で忙しく、Ian Andersonが一人で行うこととなった。そしてエンジニアリングはRobin Blackの都合が悪く、John Burns(ジョン・バーンズ)が担当。新スタジオ、新エンジニア、単独プロデュースそして楽器が弾けないメンバー、これらはアルバムのレコーディングに重大な影響を及ぼすことになる。
なお、同時期にアイランド・スタジオではLED ZEPPELIN / レッド・ツェッペリンが4枚目のコーディングを行っており行き来もあった。両者とも4枚目そして最もポピュラーなアルバムを同じ時期に同じスタジオでレコーディングしているとは・・・出来すぎているが事実だ。

曲解説
あまりに有名なリフをもつ1(Aqualung)と10(Locomotive Breath)はバンドの代表曲。今に至るまで英米のラジオでは頻繁にオンエアされ、またライヴでは欠かせない定番曲である。そして2(Cross=Eyed Mary)、4(Mother Goose)、7(My God)、8(Hymn 43)、11(Wind Up)とファンに人気の高い名曲がずらりと並ぶ。8(Hymn 43)は米国でシングルカットされ、91位とチャート成績こそ芳しくなかったが頻繁にオンエアされたためか非常に人気の高い曲となっている。
ところで、前作までと比べアコースティック曲が増えていることに気づく。これは当初から意図していたというよりは、バンドとしての製作が捗らなかった結果Andersonの原曲からほとんど進歩させることが出来なかった結果なのでは?と思う。それぞれの曲の出来は良いもののトータルとしては散漫なところも無きにしも非ずで、A面をAQUALUNG、B面をMY GODとサブタイトルをつけたのはパッケージングで統一感を出そうとした苦肉の策ではないだろうか。
キーボードのJohn Evan / ジョン・エヴァンは前作BENEFITではゲスト扱いであり本作から本格参加であるが、アルバム全編を通してIan Andersonに次ぐ存在感を出している。1(Aqualung)も10(Locomotive Breath)も彼のピアノなくしては成り立たない。レコーディング中、Andersonはレコーディングに対する不満を愚痴にこぼしていたらしいが、そのこぼす相手がEvanであり当時の信頼がうかがえる。(数年後には険悪な仲となるが。)

コンセプトアルバムという評価と批判
アルバムは製作当初の仮タイトルにちなみ、先述の通りA面にAQUALUNG、B面にMY GODとそれぞれサブタイトルが付けられた。それぞれ冒頭の曲から撮られたもので、パッケージングも両方の曲に関わるつくりとなっている。おそらくアルバムに統一感を出すことが本来の目的だったと思われるのだが、こうしたつくりは本作が「コンセプト・アルバム」である、という評価につながった。特にB面に宗教を皮肉った歌詞の曲が多かったため、「反宗教のコンセプトアルバム」「宗教批判のコンセプト・アルバム」と評されることとなる。こうした「コンセプト」はキリスト教圏である欧米では批判も大きく、米国ではアルバムが「焚書」されるなどしたという。
しかし、Ian Andersonは重ね重ね本作が「コンセプト・アルバム」であることを否定し、単に同様のテーマの曲が集まっただけとしている。(集まっているのはB面で、A面の歌詞のテーマはバラバラである。)
おそらくこれは本音で、TULLの曲はAnderson一人に作詞のほとんどを負っているため、同じアルバム内に同様のテーマの歌詞が集まることは自然なのである。確かに、ただ同じテーマの歌詞が複数曲にまたがっているだけでAQUALUNGが「宗教批判のコンセプトアルバム」であれば、STAND UPは「家族関係をテーマにしたのコンセプトアルバム」、BENEFITは「Jennie Andersonとの関係をテーマにしたコンセプトアルバム」になりかねない。また、Anderson自身特に配慮があって宗教を皮肉った曲を集めたわけではなく、計算ずくのアルバムと評されるのは恥ずかしいという気持ちもあるのではないだろうか。
しかし、ChrysalisのTerry Ellisをはじめ関係者や他のメンバー一同も「コンセプト・アルバム」を否定している中で、唯一「Ianが何と言おうとこれは『コンセプト・アルバム』だ」と主張するのが当時Chrysalisでマーケティングを担当していたRoyston Eldridge(ロイストン・エルドリッジ)である。Eldridgeは次作THICK AS A BRICKの新聞紙ジャケを製作した人物であり、おそらくAQUALUNGを「コンセプト・アルバム」に仕向けた張本人ではないかと思う。また、「コンセプト・アルバム」という評価が本作のセールスを押し上げた一因であることも否定できないだろう。結果的に本作は英国チャートで最高第4位、米国チャートで最高第7位まで昇った。最高位はそれほどでもないように見えるが長くチャートインし続けた結果、トータルで700万枚を超える最も売れているJETHRO TULLのアルバムとなっている。
そして、あまりに「コンセプト・アルバム」と言われたことはIan Andersonを大いに刺激し、「そんなに言うなら本気でコンセプト・アルバムをでっち上げてやるぜ」と製作されたのが次作THICK AS A BRICK("バカ"というスラング)である。


Reissue in 1996: 25周年リマスター盤
名盤と評価されるだけあって早くにCD化されたが音質が悪いと評判?だった。リリース25周年にあたる1996年にIan Anderson公認でボーナストラック付きでデジタルリマスターされた。しかしオリジナルマスターが紛失していたためジェネレーションを経たマスターテープを利用せざるを得ず、またリマスタリング自体もイマイチだったのかそれほどの音質の改善は認められなかった。リリース当時がっかりしたことを覚えている。後述のDCC盤等が出て価値が暴落しているがボーナストラック(特にインタビュー)があるので捨てられない。このリリースで英国では再びチャートインした。

Reissue in 1997: DCC Compact Classics Gold
そんなリマスター盤がファンに失望を巻き起こして間もなく、米のDCCが新たなリマスター盤をリリースした。これはIan Andersonが所持していた英国盤用のマスターテープを利用したものらしく(なんで前年にこれを使わなかったのか??)、25周年リマスター盤より格段に音質が向上していたが、限定盤だったためコレクターズアイテムとなった。オリジナルミックスのCDであれば現在でもこれが決定版である。

Reissue in 2011: 40th Anniversary Collector's Edition
順次リリースされる40周年記念盤シリーズも2011年にAQUALUNGの番を迎えたわけだが、さすがは名盤、これまでと異なり、Steven Wilson(スティーヴン・ウィルソン)による5.1chサラウンドミックス、そしてステレオリミックス等を加えた豪華仕様となった。CD2枚組、DVD、LPそしてBlu-Rayの5枚組であるが、コンテンツ的にはBlu-Ray1枚ですべて事足りてたりする不思議な仕様である。
KING CRIMSON / キング・クリムゾンのリミックスで名を挙げたSteven Wilsonの仕事は文句なく素晴らしく、まさに21世紀のAQUALUNGに仕上がっている。AQUALUNGが好きで5.1chサラウンドの視聴環境がある人は、是非Collector's Editionを入手すべきである。
ボーナストラックも意表を突くものだった。何せ25周年リマスター盤のボーナストラックがAQUALUNGとあまり関係なかったのでロクな素材が残っていないのではと思っていたのだが・・・Ian Andersonが隠していただけでした。
中でも、先述のGlenn Cornick在籍時のモーガンスタジオでのテイクが3曲収録されたのは嬉しい。粗削りでよりライヴに近い"My God (Early Version)"や完全版の"Wond'ring Aloud, Again (Full Morgan Version)"は、なぜ今まで隠していたのか?何考えているんでしょうか?Anderson爺さんは。
また、"Up the 'Pool"が実はAQUALUNGのアウトテイクだったり、また詳細なレコーディングデータがブックレットに記載されていたり、だから、なぜ今まで隠して(ry
マニアでない人達向けにステレオリミックスとボーナストラックによる2枚組CDがSpecial Editionとしてリリースされている。ステレオリミックスもまた素晴らしくて、かえってオリジナルミックスがあまりに酷く聞こえてくる。ずっと前から語られていた、スタジオの機器が使いこなせずレコーディングが難渋を極めたという逸話は本当だったんだな、と思う。(エンジニアのJohn Burnsはこの後再び起用されることはなかった。。。)


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