1993年発表。結成25周年を記念してリリースされた4枚組ボックスセットであり、過去の名曲のリミックス、ライヴ、再レコーディング曲から成っている豪華盤。葉巻入れを模した豪華なボックスセットで、充実したブックレットも付いている。残念ながら日本盤はリリースされなかった。廃盤で現在は入手困難。
まず、Disc1は過去の名曲のリミックス。ファーストアルバム「THIS WAS」から「THE BROADSWORD AND THE BEAST」の間から選曲されている。本作リリース当時は「CATFISH RISING」まで出ていたのであるが、ここで「THE BROADSWORD AND THE BEAST」までしか選曲対象とされなかったのは、「THE BROADSWORD AND THE BEAST」までアナログレコーディングでありCDでの音質に満足していなかったためかもしれない。
もちろん音質はグンとアップしている。音の感触の上での感想であるが、一部ドラムマシーンを使用している感じがする。
"Aqualung"や"Locomotive Breath"が抜けてはいるがベスト盤として充実した一枚だ。
次に、Disc2は1970年11月4日の米カーネギー・ホールでのライヴで、そう、「LIVING IN THE PAST」に収録されている"By Kind Permission of / バイ・カインド・パーミッション・オブ"と"Dhama for One / ダーマ・フォー・ワン"と同日である。メンバーはIan Anderson(イアン・アンダーソン/Vo,Flute,Harmonica,Acoustic Guitar)、Glenn Cornick(グレン・コーニック/Bass)、Clive Bunker(クライヴ・バンカー/Drums)、Martin Barre(マーティン・バー/Electric Guitar)、John Evan(ジョン・エヴァン/Organ,Piano)で、初期のラフだがアツイ最高の演奏を聴くことができる。冒頭の"Nothing is Easy"からどう聴いても尋常ではない、スタジオテイクなんか吹っ飛んでしまうプレイだ。やはりJETHRO TULLはライヴバンドである。
近年同時期のワイト島ライヴがオフィシャルリリースされたが、このカーネギーライヴのほうがクオリティは上である。ただ、ワイト島や「LIVING IN THE PAST」収録の2曲と聴き比べると、本作のカーネギーライヴはミキシング段階でサウンドにかなりエフェクトがかけられているようだ。
なお、3(With You there to Help Me)はピアノソロがカットされている、というか、その部分が「LIVING IN THE PAST」の"By Kind Permission of"なんだが。
6(Sossity, You're A Woman)と7(Reasons for Waiting)はメドレー。9(Guitar Solo)はタイトルどおりBarreのギターソロだが・・・かなりとんでもなプレイ。
"My Sunday Feeling"はこの日は演奏されなかったのだろうか。一つ注文をつけるなら「LIVING IN THE PAST」の分も含めて完全版にして欲しかった。
そしてDisc3は過去の名曲の再レコーディング。おそらくこの後行われた25周年ツアーをにらんだもので、ツアーで演奏されることになる曲目、アレンジである。メンバーはIan Anderson、Martin Barre、Dave Pegg(デイヴ・ペグ/Bass,Vocal)、Doane Perry(ドーン・ペリー/Drums)、Andy Giddings(アンディ・ギディングズ/Keyboard)。Anderson、 Barre、Peggそれぞれのメンバーが独演したナンバーもある。ブルースのカヴァー1(So Much Trouble)のみ新曲。アンダーソンの喉の衰えが聴いててつらいところだが、フルートソロ5(Bouree)は出色の出来。「STAND UP」に収録されている元曲よりもずっと良い。喉は年とともに衰えたがフルートは抜群に上達している。アコースティックアレンジの7(Cheerio)(Dave Pegg独演)も素晴らしい。まるで別の曲だ。その他10(Protect and Survive)、12(The Whistler)もインストアレンジ。
最後のDisc4は25年の歴史から様々なライヴ曲が集められた一枚。
1(To Be Sad is A Mad Way to Be)はすでに「20周年ヴィデオ」で登場しているアルバム未収録曲である。2(Back to the Family)も同日。メンバーは、Ian Anderson、Glenn Cornick、Clive Bunker、Martin Barre。
3(Passion Play Extract)は「A Passion Play」より"Critique Oblique / クリティック・オブリック"。これはすさまじすぎる演奏だ。このパリでのライヴは少なくとも一部は映像も残っているし、是非コンプリートで出して欲しいのだが。メンバーは、Ian Anderson、Martin Barre、John Evan、Jeffrey Hammond-Hammond(ジェフリー・ハモンド=ハモンド/Bass,Vocal)、Barriemore Barlow(バリモア・バーロウ/Drums)。
4(Wind Up/Locomotive Breath/Land of Hope and Glory-Medley)は1977年BBCのテレビ番組Sight&Sound出演時のもの。「25周年DVD」に収録されている"Aqualung"と同日であるが、この日のライヴはWOWWOW等でも放送されたことがあり、ブート界では有名。メンバーは、Ian Anderson、Martin Barre、John Evan、Barriemore Barlow、John Glascock(ジョン・グラスコック/Bass)、David Palmer(デイヴィッド・パーマー/Keyboard)。
5(Seal Driver)も1982年のハンブルクのライヴ。メンバーは、Ian Anderson、Martin Barre、Dave Pegg、Gerry Conway(ジェリー・コンウェイ/Drums)、Peter-John Vettese(ピーター=ジョン・ヴェテッシ/Keyboard)。やはりブートで流出済みでファンの間では有名な音源。
6(Nobody's Car)7(Pussy Willow)は「LIVE AT HAMMERSMITH '84」と同日で後者はこのアルバムで既出。メンバーは、Ian Anderson、Martin Barre、Dave Pegg、Peter-John Vettese、Doane Perry(ドーン・ペリー)。
これ以降はこのアルバムリリース時から比較的直前のライヴになる。8(Budapest)から11(Still Loving You Tonight)は、Ian Anderson、Martin Barre、Dave Pegg、Doane Perry、Maart Allcock(マート・オールコック/Keyboard)の編成。この中で11(Still Loving You Tonight)は「IN CONCERT」で既出。
12(Beggar's Farm)から15(Living in the Past)は、Ian Anderson、Martin Barre、Dave Pegg、Doane Perry、Andy Giddingsの編成。このアルバムリリース当時のラインナップとなる。なお、13(Passion Jig)は"A Passion Play"のテーマを編曲した変拍子のインストでスタジオアルバムには未収録である。
マニアは必携。廃盤なのでオークション等で入手するしかない。見つけたら即買いのアイテム。