STAND UP / スタンド・アップ[1]

STAND UP

  1. A New Day Yesterday / ア・ニュー・デイ・イエスタデイ
  2. Jeffrey Goes to Leicester Square / ジェフリー・ゴーズ・トゥ・レイセスター・スクェア[2]
  3. Bouree / ブーレ
  4. Back to the Family / バック・トゥ・ザ・ファミリー
  5. Look into the Sun / ルック・イントゥ・ザ・サン
  6. Nothing Is Easy / ナッシング・イズ・イージー
  7. Fat Man / ファット・マン
  8. We Used to Know / ウィ・ユースト・トゥ・ノウ
  9. Reasons for Waiting / リーズンズ・フォー・ウェイティング
  10. For A Thousand Mothers / フォー・ア・サウザンド・マザーズ

2001 Remastered Edition Bonus Tracks
  1. Living in the Past / リヴィング・イン・ザ・パスト
  2. Driving Song / ドライヴィング・ソング
  3. Sweet Dream / スウィート・ドリーム
  4. 17 (edited first half, aka 8.5) / 17(セヴンティーン)
2010 Collector's Edition Bonus Tracks
  1. Living in the Past
  2. Driving Song
  3. Sweet Dream
  4. 17 (full length version)
  5. Living in the Past (mono version)
  6. Bouree [John Peel BBC Radio Session, recorded on 16/6/1969 and broadcast on 22/6/1968]
  7. A New Day Yesterday [John Peel BBC Radio Session, recorded on 16/6/1969 and broadcast on 22/6/1968]
  8. Nothing Is Easy [John Peel BBC Radio Session, recorded on 16/6/1969 and broadcast on 22/6/1968]
  9. Fat Man [John Peel BBC Radio Session, recorded on 16/6/1969 and broadcast on 22/6/1968]
  10. STAND UP US Radio Spot #1
  11. STAND UP US Radio Spot #2

2010 Collector's Edition Disc 2 - Live at Carnegie Hall, NY, 1970
  1. Nothig is Easy
  2. My God [later appeared on AQUALUNG]
  3. With You there to Help Me [from BENEFIT] / By Kind Permission of [later appeared on LIVING IN THE PAST]
  4. A Song for Jeffrey [from THIS WAS]
  5. To Cry You A Song [from BENEFIT]
  6. Sossity, You're A Woman [from BENEFIT] / Reasons for Waiting / Sossity, You're A Woman
  7. Dharma for One [later appeared on LIVING IN THE PAST]
  8. We Used to Know
  9. Guitar Solo
  10. For A Thousand Mothers

2010 Collector's Edition DVD - Live at Carnegie Hall, NY, 1970 (Audio Only)
  1. Introduction
  2. Nothig is Easy
  3. My God [later appeared on AQUALUNG]
  4. With You there to Help Me [from BENEFIT] / By Kind Permission of [later appeared on LIVING IN THE PAST]
  5. A Song for Jeffrey [from THIS WAS]
  6. To Cry You A Song [from BENEFIT]
  7. Sossity, You're A Woman [from BENEFIT] / Reasons for Waiting / Sossity, You're A Woman
  8. Dharma for One [later appeared on LIVING IN THE PAST]
  9. We Used to Know
  10. Guitar Solo
  11. For A Thousand Mothers
2010 Collector's Edition DVD - Bonus Feature
  1. Interview with Ian Anderson London 2010

All songs are written by Ian anderson except:
"Bouree" written by John Sebantian Bach and arranged by Ian Anderson
"By Kind Permission of" written by John Evan
"Dharma for One" written by Ian Anderson and Clive Bunker
"Guitar Solo" written by Martin Barre


2010 Collector's Edition
STAND UP (Remastered) - Jethro Tull

2001 Remasterd Edition


Information

概要
ギターリストにMartin Barreを迎えたセカンド。ブルースにとらわれない幅広い音楽性を体現することに成功した出世作。

リリース年/英米チャートアクション
オリジナル---1969年。全英第1位/全米第20位。
リマスター---2001年。
コレクターズエディション---2010年。

アルバム種別
スタジオ盤

メンバー
STAND UP: #2 1968-70
Vo, Flute, etc. G, Flute B Ds
Ian Anderson
イアン・アンダーソン
Martin Barre
マーティン・バー
Glenn Cornick
グレン・コーニック
Clive Bunker
クライヴ・バンカー
Live at Carnegie Hall: #3 1970
Vo,Flute,G etc. G B Ds Key
Ian Anderson
イアン・アンダーソン
Martin Barre
マーティン・バー
Glenn Cornick
グレン・コーニック
Clive Bunker
クライヴ・バンカー
John Evan
ジョン・エヴァン

オリジナルアルバムレコーディング情報
プロデューサー --- Terry Ellis and Ian Anderson
エンジニア --- Andy Johns
スタジオ --- Morgan Studio, London

個人的評価
-- Highly Recommended !


Review

背景
ファーストアルバムTHIS WASが英国で好評を得たJETHRO TULLは、当時の他のブリティッシュロック勢と同じく最大の音楽マーケットである米国への進出を狙う。しかしギターリストのMick Abrahamsは過酷なツアーを好まず(飛行機嫌いでもある)、他のメンバーやマネジャーのTerry Ellisと対立を深める[3]。もちろん音楽性の対立や主導権争いもあった。Ian Andersonはブルースから脱却しフォークやクラシックに手を広げた幅広い音楽性を求め、Mick Abrahamsはブルースに固執した。人間関係的にもMick AbrahamsとGlenn Cornickは仲が悪かった。一方でプレイヤーとしてはAbrahamsが一頭抜きんでていた面もある。こうしてMick Abrahams対その他の構図が出来上がった挙句、結局解雇に近い形でAbrahamsはバンドを去り、ブルースロックバンドBLODWYN PIGを結成して我が道を行くことになる。Abrahamsの損失は大きかったがTULLが世界的なバンドへ飛躍するためには仕方のない選択だったといえる。

メンバーチェンジ:ギターリストの交代
Mick Abrahamsを失ったJETHRO TULLはすぐさま後任のギターリスト探しを始める。ファーストアルバムのTHIS WASの売れ行きが上々で有望の新バンドだったため、多数の有名無名のギターリストがオーディションに訪れたと言われている[4]。結局、EARTHというローカルバンドにいた左腕ギターリスト、Tony Iommiが二代目のポジションを手に入れた。しかし、Iommiはバンドになじめず、ROCK 'N' ROLL CIRKUSの撮影後脱退してしまう[5]。最終的に、発展途上であるがためにIan Andersonに強い印象を残したMartin Lancelot Barreに決まった。Tony IommiはEARTHに戻るが、EARTHは後にBLACK SABBATHと名を変え最強のへヴィメタルゴッドとなる。
Martin Barreを迎えたJETHRO TULLは、ツアーを望まないAbrahamsが脱退したこともあり、精力的なツアーに取り掛かる。本作のレコーディングは初の全米ツアーから帰国した勢いを駆って行われた。大方完成したところで再び全米ツアーに出る。ほとんどが前座での公演だったものの米国ツアーの受けは大変良く、好セールスの下地となった。そして帰国後、1969年の夏ごろに完成した。

音楽性
ファーストアルバムのTHIS WASはMick Abrahamsの色も強かったが、このアルバムよりIan Andersonが完全にバンドを掌握し、全曲の作詞作曲もAndersonが手掛けるようになった。曲作りはTHIS WASの完成直後から行われており、Martin Barreが加入した時にはほぼ完成していたという。しかし、リズムについてはGlenn CornickとClive Bunkerの二人が、ギターサウンドについてはAndersonとBarreがそれぞれ試行錯誤していたらしく、バンドの共同作業と言える[6]。AbrahamsがいなくなったためかAndersonはギターも弾いている。そして元々管楽器奏者であるMartin Barreはこのアルバムではフルートもプレイしている[7]
前作に見られたブルース色は後退し、代わってフォークやクラシック、ジャズを取り入れた幅広い音楽性が特徴で、なんともカテゴライズしがたい(ある意味取っつきにくい)JETHRO TULLミュージックが粗削りながら姿を見せている。
Ian Andersonとしては実に自分の思い通りの音楽性・完成度に仕上がったらしく、「クリエイティヴ面でのファーストアルバム」「好きなアルバム」と常々語っている。市場にも好意的に迎えられ全英第1位、全米第20位と大ヒットした名盤である。また、この後の快進撃からすると奇妙だが、唯一の全英ナンバーワンアルバムだったりする。連続ではないが7週間全英チャートのトップを占めた。だがしかし、米国での熱狂の方が上だったという[8]

アルバムタイトルとジャケット
STAND UPというタイトルと、それを表すようなメンバーが立ち上がるギミックが仕掛けられたインナージャケットはマネジャーのTerry Ellis(Chrysalisの創始者)の発案によるもの。EllisはIan Andersonとともにプロデューサーとしてもクレジットされている。JETHRO TULLというとIan Andersonがすべて仕切るバンドというイメージがあるが、EllisはAndersonとツーカーの仲であり、独自の判断で動くこともままあった。

曲解説
1(A New Day Yesterday)の渋カッコいいイントロで早くも名盤認定してしまいたくなるほど。ミドルテンポのブルースロックだがファーストアルバムよりも洗練された曲調でフルートの導入も無理がない。現在に至るまでライヴでプレイされることが多いスタンダードナンバーである。
続く2(Jeffrey Goes to Leicester Square)で一気にフォーク調に転じるのは、単なる変態ロックバンドではないことを印象付けるため計算だろう。この1(A New Day Yesterday)2(Jeffrey Goes to Leicester Square)の流れは、本アルバムが多様な音楽性を包含していることを象徴している。Martin Barreのフルートも聴ける[7]。タイトルのJeffreyとは後にベーシストとして加入するIan Andersonの友、Jeffrey Hammondのこと。
そして3(Bouree)もまたロックと括ることが出来ない曲。J.S. Bachのリュート組曲のテーマをジャズ風に展開したこれまたJETHRO TULLの代表曲。中間部でベースソロを聴かせるがこの頃はまだ他のメンバーが自己主張する余地があったんだよなあ。クレジットにはないがフルートのセカンドラインはMartin Barreという説がある[7]
4(Back to the Family)はMartin Barreのギターを前面に出したハードロック。リリース前のライヴでもプレイされており、テンポが速くなるところでのギターとフルートの絡みはこの後の二人の長いコンビネーションを表すかのごとく絶妙だ。
5(Look into the Sun)はアコースティックで静かにA面を締める。
6(Nothing Is Easy)から旧B面で、いかにもトップ曲らしくエネルギッシュ。凝ったアレンジと飽きさせない展開はいかにもTULLで、名曲である。
そして7(Fat Man)で再びフォーク曲。これはCDだと気付きにくいが構成上2(Jeffrey Goes to Leicester Square)と対比されている。
8(We Used to Know)はEAGLESの"Hotel Calofornia"にパクられたことで有名な曲。EAGLESは70年代初期にTULLの前座をしており、その際に耳に入ったんだろうとAndersonは推測している[9]。新入りのMartin Barreのギターソロがフィーチャーされている。
9(Reasons for Waiting)で再びアコースティック。ストリンズをアレンジしているのは後にメンバーとなるDavid Palmer。当時はアレンジャーとして裏方からバンドを支えていた。このアレンジは素晴らしく、元々のメロディの良さを何倍にも引き立てている。Martin Barreのフルートが聴ける[7]
そしてアルバム本編はハードロック調の10(For A Thousand Mothers)で終わり。やはりフルートが絡むあたりが他には真似できない個性である。
なお。このアルバムにはアウトテイクはないとのこと[10]。また、Glenn Cornickによれば、(歌詞は)Ian Andersonと両親の関係に関するものだという[11]

2001年リマスター盤
2001年にボーナストラック付きでリマスター盤がリリースされた。Ian Andersonによるライナーノーツが付いている。前述のとおりアウトテイクがないため、シングル曲がボーナストラックに選ばれている。
11(Living in the Past)はアメリカツアー中に、留守にしている英国市場のためにレコーディングされたシングル曲。アルバムに先立ちリリースされ全英第3位の大ヒットとなった。代表曲の一つに挙げられる。12(Driving Song)はその11(Living in the Past)のB面。
13(Sweet Dream)も同じく英国向けのシングル曲。7位のヒットとなった。Ian Andersonがレンタルした12弦ギターを弾いているがそれはPeter Greenも使ってたものだったらしい[12]14(17)13(Sweet Dream)のB面だが、曲の途中でフェイドアウトしてしまう。これは20周年BOXでのエディットを引き継いでいるためである。そのためマニアからは"8.5"と揶揄された。
日本盤もリリースされた。最初は特殊ジャケを再現した紙ジャケでリリースされ、海外でもコレクターズアイテムとなっている。しかしアナログ再現というコンセプトのためか、Andersonのライナーノーツ及びその対訳は収録されていない。次に通常盤がリリースされた際には収録された。

2010年コレクターズエディション
2010年に3枚組のコレクターズエディションがリリースされた。THIS WASのコレクターズエディションと異なり本編はリミックスのような特別テイクではなく、2001年のリマスターとまったく同じである。おそらくマルチトラックが紛失しておりリミックスが不可能なのだろう。
特殊ジャケが再現されているが、Ian Andersonは日本の紙ジャケを知らないのか、ライナーノーツで初再現と書いている。

    CD One: 2001 Remaster & Bonus Tracks
本編Disc1のボーナストラックはまずリマスター盤と同じ4曲が入っている。ただし14(17)は"8.5"ではない完全版である。
15(Living in the Past)はモノラルバージョン。
16(Bouree)から19(Fat Man)はBBCのTop Gearセッションから。16(Bouree)19(Fat Man)AQUALUNGのリマスター盤に、17(A New Day Yesterday)20周年BOXに収録されていたので、18(Nothing Is Easy)のみがオフィシャル初登場である。Top GearのDJ、John PeelはTULLがデビューした際に大プッシュしてくれた人物だったが、このSTAND UPは気に入らなかったようで、結果バンドと仲たがいしてしまった。結局和解しないまま、Peelは鬼籍に入った[13]
20(STAND UP US Radio Spot #1)21(STAND UP US Radio Spot #2)は収録曲としてはかなり苦し紛れだが、米でのラジオコマーシャルである。良く残っていたな。
    CD Two & DVD: Live at Carnegie Hall, NY, 1970
そして、Disc2と3(DVD)がこのコレクターズエディションの聴きものである。次のアルバムBENEFITの米国ツアーから1970年のカーネギーホールでのライヴ完全版だ。元々LIVING IN THE PASTで一部が出て、そして25周年BOXで残りが出ていた、と思っていたのだがところがどっこい、25周年BOX収録バージョンは実はかなりのカットがあった。MCも含めリミックスされてここに完全版がそれも5.1chで陽の目を見ることとなった。もっとも本当の完全版はDVDの方でCDは若干カットがある。DVDといってもライヴは音声のみで、Ian Andersonのインタビューが映像で付いている。
ライヴは初期TULLの名演中の名演であり、ファンならば必聴である。25周年BOXが廃盤で入手困難の中、完全版かつ音質向上でリリースしてくれたことは大変うれしい。
AndersonのインタビューはSTAND UPから話がだんだんそれていく(笑)。編集されている割には結構長く、相当しゃべったと思われる。中々貴重な話もあるが、ウッドストックの件などは他の関係者の証言とは矛盾する点もあって興味深い。
しかしこのカーネギーライヴ、STAND UPとはあまり関係ないよね・・と突っ込みたくなる。インタビューでは収録曲の多くがSTAND UPのものだ・・とか言っているが、BENEFITのボーナスの方がまだ話が分かる。STAND UPのボーナスならば、ストックホルムでのライヴ映像やTV出演映像、ライヴでのみプレイされていた曲などいくらでもお宝はあるのに、意図がよく分からない。

その他
Mick Abrahams脱退(解雇)後、JETHRO TULLは世界的なバンドへと飛躍した。そのためAbrahamsは「JETHRO TULLのPete Best」と呼ばれることとなる。しかし25周年ヴィデオでそのことを言われたAbrahamsは"I'm the worst?"と聞き間違えている・・・


Notes

[1]--アナログ時代の邦題は「スタンダップ」だった。
[2]--原題ママ。"Leicester Square"はロンドンの地区で一般には"レスター・スクェア"と呼ばれる。
[3]--Abrahams,Mick. WHAT IS A WOMMETT, Apex Publishing Ltd. (2008), P103 et al.
[4]--二代目ギターリストの候補者たち, Russo,Greg. FLYING COLOURS: THE JETHRO TULL REFERENCE MANUAL REMASTERED EDITION, Crossfire Publications (2009), P35
[5]--テレビ番組出演のための臨時加入とされるが、Tony Iommi自身はフルタイムメンバーであり自らの意志で脱退したと述べている。Rees,David. MINSTRELS IN THE GALLERY - A HISTORY OF JETHRO TULL, Firefly (1998), P29
[6]--Disc3 Interview with Ian Anderson London 2010 et al.
[7]--STAND UPにおけるMartin Barreのフルート
[8]--Robin Black Interview JETHRO TULL - THEIR FULLY AUTHORISED STORY - DVD
[9]--Disc3 Interview with Ian Anderson London 2010 et al.
[10]--Ian Anderson Interview JETHRO TULL - THEIR FULLY AUTHORISED STORY - DVD ただし実際には"To Be Sad Is A Mad Way To Be""Martin's Tune"といったライヴでプレイされていることが確認されている曲がある。
[11]--Nollen,Scott Allen. JETHRO TULL A HISTORY OF THE BAND - 1968-2001, McFarland (2002), P46
[12]--Disc3 Interview with Ian Anderson London 2010
[13]--Ibid

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二代目ギターリストの候補者たち
STAND UPにおけるMartin Barreのフルート


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