Tony Iommi
〜幻の2代目ギターリスト〜

ROCK 'N' ROLL CIRCUS
ROCK 'N' ROLL CIRCUS


Tony Iommi / トニー・アイオミ (1948〜 /在1968/ギター)

Anthony Frank Iommi / アントニー・フランク・アイオミ。この人はここ日本ではIan AndersonとかJETHRO TULLよりもずぅっと有名なのでバイオをいちいち解説する必要はないかも。元祖ヘヴィメタルギタリスト。JETHRO TULLと並んでこれまた息の長いブリティッシュバンド、BLACK SABBATHのリーダーである。

Iommiが若いころ工場での事故により右手薬指の先を切断した話は有名だが(Iommiはサウスポー)、彼がこれを乗り越え、逆に人差し指+小指(薬指の代わり)で5度のコードを押さえる(他の指はミュート)というスタイルがもはやヘビメタの古典となったという逸話は涙なくしては語れない。
彼は地元バーミンガムでGeezer Butler(ギーザー・バトラー)、Ozzy Osbourne(オジー・オズボーン)、Bill Ward(ビル・ウォード)とともにEARTHを結成する。JETHRO TULLと共演することもたびたびあったようで、Mick AbrahamsがIan Andersonに訣別を宣言したその場にも居合わせたのだそうだ。そしてその夜JETHRO TULLのメンバーはIommiに加入を依頼したのだという。彼はEARTHの他のメンバーに相談したが彼らはIommiに自分たちのことは心配せず参加することを勧めた。
後日Iommiはあくまでの形式的なものとしてのオーディションということでロンドンに呼ばれた。
「そこは人々でごったがえしていた(注:Iommiはすでに自分に決まっているので一人だろうと思っていたのだろう) -- Martin Barre(マーティン・バー)や THE NICEのDavy O'List(デイヴィ・オリスト)をそこで見たのを覚えている。あまりに多くの人がいたので私は立っていられなかった。だから私は帰宅するために実際にその場を出てしまったんだ。グループの一人が私を連れ戻すために追いかけてきてすぐに私の番にすることを約束したので、私はオーディションを受けポストを得たのさ。」

JETHRO TULL側の公式な見解ではTony Iommiはテレビ番組に出演するための代打ギタリストだったということになっているが、Iommiによれば正式メンバーとしての加入でありバンド内の人間関係についていけなくて自分から脱退したのだという。
新たな環境になじめなかった彼はリハーサルについて来ていたGeezer Butlerに相談したが、もう少し時間をかけるようにと言われた。しかし数日後ついにIan Andersonに胸のうちを告白するのである。
「音楽やTULLのメンバーに関して問題があったわけではないんだ。私は自分自身の内面に、こうした新たな状況にいることに居心地の悪さを感じていただけなんだ。」
IommiによればJETHRO TULLのメンバーはてんでばらばらで、とくにIan Andersonとその他、というふうに分かれていたという。
「Clive(クライヴ・バンカー)とGlenn(グレン・コーニック)は一緒だった。しかしIanは別のテーブルに一人で座ってるんだ。それは私には孤独にみえたね。私たちが初めて食事に出かけたとき、私はIanと同じテーブルに座った。みんな一緒だろうと思ってね -- しかし実際にはそうではなかったんだ!」
「我々みんながしゃべっていて、そこにIanが入って来ると、彼らは皆ピタリと黙ってしまう。私は数年後に同じ事が起きるのを見た。米でSABBATHがTULLと一緒にギグをやったときだよ。」

IommiはAndersonに脱退を申し出るが、もう少し時間をかけて考え直すように言われる。しかしIommiの決心は揺るがず、とりあえずテレビ番組には出演することで合意した。
その番組がTHE ROLLING STONESのROCK 'N' ROLL CIRCUSである。この番組でJETHRO TULLは"A Song for Jeffrey"を演奏するが、Ian Anderson以外は口パクである -- つまりTony IommiのJETHRO TULLに対する音楽的な貢献は結局ゼロというわけである。
しかしわずかの間とはいえ、すでにプロデビューし大成功を収める直前にあったJETHRO TULLに在籍したことは、Tony Iommi自身そして彼が深く関わっていくBLACK SABBATHの成功に大きな影響を与えたという。
「私はたくさんの面で本当にTULLに感謝している。なぜなら我々のバンドがどう動いて行けばよいのかについてたくさんのことを私に教えてくれたからね。」
例えばIommiたちはそれまでリハーサルについてはいいかげんであった。しかしJETHRO TULLは厳格で朝9時に集合といったら絶対にその時間であった。「私はそれまでそういう経験をしたことがなかった。しかしそれは本当に良い姿勢だった。そして私は同様の姿勢でSABBATHに戻ったんだ。そういうわけで、TULLとの時間のおかげで私は我々自身を軌道に乗せるために私が他のメンバーに対して下すことのできる責任や権威の意義を学んだんだよ。」

そしてTony IommiはEARTHにもどり、EARTHは後にBLACK SABBATHと名前を変え1970年の13日の金曜日にレコードデビューし、数々のヒットアルバムを生んで大成功を収め、ヘヴィメタルシーンに絶大な影響を与えることになる。

Mick Abrahamsの後任になぜIommiに白羽の矢が立ったのかについては、TULLサイドによる明確な説明はない。しかし、BLACK SABBATHの"Wicked World"のソロなどAbrahamsの"Cat's Squirrel"に音色が似てなくもない。両者ともブルースにルーツがあるし、後任としては案外フィットしていたのかもしれない。


参加オリジナルアルバム


戻る

j-tull.jp
Copyright2004 j-tull.jp