SLIPSTREAM

東芝EMI TOCP-67288 (Remastered/紙ジャケ)
Chrysalis 7243 594773 0 5 (Remastered/EU)
SLIPSTREAMの一コマ
  1. Black Sunday
  2. Dun Ringill
  3. Fylingdale Flyer
  4. Songs from the Wood
  5. Heavy Horses
  6. Sweet Dream
  7. Too Old to Rock 'N' Roll: Too Young to Die
  8. Skating Away
  9. Aqualung
  10. Locomotive Breath

-- Highly Recommended !

1981年発表。ライヴとプロモを中心としたJETHRO TULL初の映像作品。
出演しているメンバーはイアン・アンダーソン、マーティン・バー、デイヴ・ペグ、エディ・ジョブソン、マーク・クレイニーという、アルバム「A」の布陣。長らく廃盤で入手困難だったが、近年ブラジルで勝手にDVD化されたり、リマスター盤「A」に同梱されたりしたので入手できるようになった。

「A」はエディ・ジョブソンファンの多い日本ではともかく、欧米では大変不評である。そしてまた、「A」のツアーも当時大変評判が悪かったらしく、観客動員数もガクリと落ちてしまった。特に新加入のエディ・ジョブソンに対する従来のファンの拒否反応が大きかったと言われている。確かにCS80の薄っぺらい音はTULLサウンドにはふさわしくないものだったし、メンバーのツナギの衣装もそれまでのTULLのイメージを一変させるものでそこもオールドファンには大ショックだったらしい。
ちなみにジョブソンの後任、ピーター・ジョン・ヴェテッシは、ジョブソンを反面教師としたのか、努めてシンフォニックなサウンドメイキングを心がけていた。また、ジョブソン自身1985年にライヴで一時復帰したときは、シンプルで重厚な音を出していた。んで、その後にジョブソンの轍を踏んだのが、これまた日本では人気な、かのドン・エイリーである・・・
さて、「A」のライヴが悪かったのかというと、そういうわけではない。絶頂期とされる70年代後半の重厚なプログレハードサウンドとは異なるサウンドだが、さすがテクニシャン揃いのTULL、80年代らしいモダンなTULLサウンドで素晴らしい。

ライヴは1(Black Sunday)、4(Songs from the Wood)、5(Heavy Horses)、8(Skating Away)、9(Aqualung)、10(Locomotive Breath)。場所はハマースミス・オデオンではなく、実はLAスポーツアリーナである。この日の音源はブートで出回っており、比較すると本作では若干オーバーダブが施されていることがわかる。
見どころは5(Heavy Horses)や9(Aqualung)、10(Locomotive Breath)にてエレクトリック・ヴァイオリンを弾くジョブソンで、特に10(Locomotive Breath)の後半部のメドレーで弾きまくる姿は圧巻。とはいえ、5(Heavy Horses)でのシンセアレンジはやはりいただけない。このあたりで当時のファンがジョブソンを酷評した理由が良く分かる。

残りはプロモ映像だがどれもストーリー仕立てになっていて、例えば3(Fylingdale Flyer)は「A」の話、そして6(Sweet Dream)ではドラキュラに扮するアンダーソンが登場する。この曲、音源はなぜか「LIVE BURSTING OUT」のものが使用されている。ドラキュラ退治のために登場する十字架が"A"のロゴマークだったりして笑える。
だが最も笑えるのは -- もしかしたらこのヴィデオの最大の見物かもしれない -- 7(Too Old to Rock 'N' Roll: Too Young to Die)である。メンバー全員が老人の扮装をして繰り広げるJETHRO TULL風ユーモアの世界、実にブリティッシュだ。歌詞の内容を知っているとなおいっそう楽しめる。メンバーもよほど出来に満足しているのか、後に「20周年ヴィデオ」に再録されている。

ヴィデオ全体がコンセプチュアルな作りになっており、浮浪者に扮するアンダーソン(「AQUALUNG」のジャケットを思い出していただきたい)が所々に登場して、例の巨大なバルーンに追いかけられる・・・しかしラストの意味は分からん。もっとも始まりもちょっとアレなのだが。英国人お得意のナンセンスか?

ともあれ、必見の名作ではある。 だが、初心者の方に言っておきたいが、特にライヴはあくまでも1980年当時のJETHRO TULLの姿であって、他の時期はまったく違うサウンドであることを肝に銘じていただきたい。TULLのサウンドは実にめまぐるしく変化するのである・・・


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Note:
#リマスター盤「A」に同梱されているが、CCCD盤でない通常盤だとPALなので注意。

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