Composed by IAN ANDERSON
Additional music by ANDREW GIDDINGS
Orchestrations by IAN ANDERSON and ANDREW GIDDINGS
Additional orchestrations and ideas by GARETH WOOD and ROGER LEWIS
Musicians
IAN ANDERSON : Concert and alto flute, bamboo flute, other wooden flutes and whistles
ANDREW GIDDINGS : Keyboards, orchestral tones and colours
And Other Musicians
Doane Perry : tuned and un-tuned percussion / Douglas Mitchel : clarinet / Christpher Cowie : oboe / Jonathan Carrey : violin / Nina Gresin : Cello / Randy Wigs : harps / Sid Gander : french horn / Dan Redding : trumpet
Recorded : 1994, at Ian Anderson's home studio, Buckinghamshire
Producer : IAN ANDERSON
Engineer : IAN ANDERSON, ANDREW GIDDINGS and LEON PHILLIPS
私的アオリ
1995年発表。イアン・アンダーソンのセカンド・ソロアルバムで全編フルート主体のインストゥルメンタルである。
80年代後半以降のアンダーソンは年齢や長年の酷使による喉の衰えを補うために、アレンジ面でフルートへの比重を大きくするようになるが、これにはアンダーソンが自身のフルートプレイに対する自信を深めていたことも大きな背景としてあると思う。喉の衰えを自覚し熱心に研鑽に励んでいたのだろう。鮭の養殖をしながら(笑)。
そもそもアンダーソンがフルートを手にしたのは、JETHRO TULL結成時に彼がマネジメントの戦略でギターを取り上げられたためであり、そのため正式な教育を受けたわけではなく、全くの独学であった。映像を見れば分かる(自身も言ってる)のだが彼の指使いはたまに間違っていることがある。クラシックの楽器を独学するというのは実に度胸(?)のいることであり、まあまともなテクニックを身につけるのは殺人的に難しい、と私自身の経験からも思う。
そんなアンダーソンであるから、デビュー当時はお世辞にも上手とはいえず、そのうえ奏法は故ローランド・カークの変態プレイの模倣であった。(変態度はカークの方がずーっと上だが)
アンダーソンのプレイになかに彼らしさ、いわば彼なりの個性を見出すことができるのはJETHRO TULLのアルバムでは「CREST OF A KNAVE」以降、すなわち80年代後半のカムバックより後だというのが私なりの見解である。
また、このアルバムのレコーディング前に正式にフルートのトレーニングを受けたらしい。そんなところにフローティストとしての自覚が窺える。
そしてこのアルバムである。本作の音楽性は、そうしたプレイヤーとしての個性確立の流れを受け、さらに従来からアンダーソンの音楽性の大きな部分を占めていたトラッドやクラシックのエッセンスを取り入れるというスタンスで理解してよいだろう。
何も知らない人が聴いたらロックミュージシャンのアルバムだとは夢にも思うまい。クレジットを見れば分かるように本作はロックバンドスタイルのものではなく、室内楽団をバックにしたフルートアルバムである。そういうわけで初心者には不向きである。クラシックやフルートが好きな方にはお薦め。曲の質は非常に高く、棄て曲は一曲もない傑作だと思う。
本作はTULLのキーボーディスト、アンドルー・ギディングズのサポートで制作されたが、彼とアンダーソンの共作アルバムと言っても差し支えないほど貢献は大きい。アンダーソンはこれまで、ソロアルバム制作の際は必ず片腕となるキーボーディストの協力のもと作品を仕上げてきた。エディ・ジョブソンとの「A」(これは結局バンド名義でリリースされたが)、ピーター−ジョン・ヴェテッシとの「WALK INTO LIGHT」然りである。そしてその音楽的方向性が次のJETHRO TULLのアルバムのそれを決定してきた。本作に続くのは傑作「ROOTS TO BRACHES」である。
j-tull.jp