Produced and engineered by Ian Anderson
Shynthesisers, Piano and Blouse vocals / Peter-John Vettese
Other instruments and serious vocals / Ian Anderson
All songs written by Ian Anderson except "Trains", "Different Germany", "User-Friendly", "Fly by Night", "Made in England" - Ian Anderson/Peter-John Vettese
1982年の「THE BROADSWORD AND THE BEAST」はファンの受けもよくセールス的に成功した力作だったが、その原動力となったのは新加入のキーボーディスト、ピーター−ジョン・ヴェテッシだった。イアン・アンダーソンはヴェテッシの類まれなる才能を認め、彼とともにファーストソロアルバムの製作に取り掛かる。
これが、1983年にリリースされた本作、「WALK INTO LIGHT」である。残念ながら全米第78位とセールス的にはイマイチだったが、曲の出来の良さが評価の高い好盤である。
本来ならば1980年の「A」が初のソロアルバムだったはずなのだが、TULLの人事のゴタゴタ事情のため「A」はバンドのアルバムとしてリリースされたため、このアルバムが最初のイアン・アンダーソン名義のアルバムとなった。
"JETHRO TULL = イアン・アンダーソン"だと一般には思われており実際そう言って差し支えなくもないのだが、このアルバムにJETHRO TULLを期待すると肩透かしをくらうかもしれない。
もっとも、バンドのメンバーがソロアルバムを出したときはそのバンドの音楽性とかけ離れたものを出す、というのはほとんど鉄則といってよいのだが。
このアルバムはアンダーソンのソロ作というよりは -- 「A」がアンダーソンとエディ・ジョブソンのそれであったように -- アンダーソンとピーター-ジョン・ヴェテッシのコラボレイションアルバムだと言ってよいだろう。(アンダーソンもそう言っているのだが)
そして音楽的には「A」以来のシンセ路線をぐっと推し進めた作品であり、実にニューウェイヴ的である。アンダーソンが当時やりたかったことをバンドという枠を取り払って実行した作品といえる。だからといって決して気難しい作品ではない。内容は実にポップで楽曲はさすがアンダーソン、期待を裏切らず粒ぞろいなのである。
シングルにもなった2(Made in England)をはじめ実に聴きやすくまとまっている一方、10(Different Germany)のようなドラマティックなバラードもあり充実した内容である。
現在のアンダーソンはこのアルバムを「曲は良い。」としながらも「80年代初頭のテクノロジーに負った作品なので、できれば再レコーディングしたいね。」と語っている。確かに使用されているほとんどの楽器はアナログシンセサイザーであり(ドラムはドラムマシン。フルートもあまり使われていない)、デジタルテクノロジーが発達した現在に比べれば苦労も多かったのかもしれない。それと関係があるのだろうか、数曲の歌詞はコンピュータテクノロジーに関するものである。
名義上はアンダーソンのソロアルバムであるのだが、先述のようにヴェテッシのインプットが実に大きい。作曲面でもアルバムの半分の曲はヴェテッシとの共作である。この路線をJETHRO TULLというバンドスタイルで推し進めたのが翌年にリリースされる「UNDER WRAPS」である。
j-tull.jp