J-TULL DOT COM

Papillon BTFLYCD 0001 (EU)

J-TULL DOT COM

  1. Spiral
  2. Dot Com
  3. Awol
  4. Nothing @ All
  5. Wiched Windows
  6. Hunt by Numbers
  7. Hot Mango Flush
  8. El Nino
  9. Black Mamba
  10. Mango Surprise
  11. Bends Like A Willow
  12. Far Alaska
  13. The Dog-ear Years
  14. A Gift of Roses
  15. Secret Langage of Birds (Secret Truck)


IAN ANDERSON
Vocals, concert flute, bamboo flute, bouzouki and acoustic guitar
MARTIN BARRE
Electric and acoustic guitars
ANDREW GIDDINGS
Hammond organ, piano, accordion, chromatic and qwerty keyboards
DOANE PERRY
Drums and percussion
JONATHAN NOYCE
Bass guitar

Najma Akhtar additional vocals on "Dot Com"

Words and music by Ian Anderson
except "Hot Mango Flush":music by Martin Barre
and "Nothing @ All", music by Andrew Giddings

Produced and engineered by Ian Anderson


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1999年8月24日発表。長年JETHRO TULLの屋台骨を支えてきたデイヴ・ペグ(FAIRPORT CONVENTIONに専念)に代わりジョナサン・ノイスを迎え、何と1984年の「UNDER WRAPS」以来実に久しぶりに全曲同一メンバーでレコーディングされた最新スタジオ盤。
本作より、デビュー以来連れ添ってきたChrysalisレーベルを離れ、米のインディーズレーベルFuel2000に移籍した。ただ英でのリリースはChrysalis傘下の新興レーベルPapillonが行うので、完全に手を切ったとか問題があって別れたというわけではなさそうである。しかしPapillonでのレコードNo.がBTFLYCD(=Butterfly=Chrysalis)というのも・・・

アルバムタイトルは、キーボーディストのアンドルー・ギディングズが運営するオフィシャルサイトのURL(www.j-tull.com)から取ったもの。当時JETHRO TULLはwww.jethrotull.comドメインを巡って某ITゴロとドメイン紛争になっていたが、その後WIPOの裁定が下りドメインを勝ち取っている。
アルバム名については「J-TULL DOT COM」と「DOT COM」の両方の表記があるようだが、ここでは「J-TULL DOT COM」とさせていただく。

前作「ROOTS TO BRANCHES」で見せたエスニックな要素は本作でも受け継がれている。タイトルトラックにはインド人ミュージシャン、ナジマ・アクタールがコーラスで参加している。彼女はJimmy Page & Robert Plantの"The Battle of Evermore"で故サンディ・デニーのパートを歌っていたシンガー。ペグはいなくなったけど、なんだかFAIRPORT CONVENTIONとの縁を感じる。。。
昔の楽曲のメロディを(意図的に?)流用しているところが数箇所あり、「WARCHILD」のころに近い雰囲気がある。14(A Gift of Roses)では歌詞に"Passion Play"という言葉まで飛び出すが、これは"SeaLion"や"Skating Away on the Thin Ice of the New Day"と同様の手口だ。

アルバムの冒頭を飾る1(Spiral)はヘヴィなギターが炸裂するミドルテンポの曲。こうしたもろにロックな曲ではアンダーソンの喉の衰えが気になる。続く2(Dot Com)は本作最大の聴きものの佳曲でありJETHRO TULL史に残る名曲であろう。やはりこうしたバラードの方が現在のアンダーソンの喉には合ってると思う。フルートも最高に艶がのっており、また各メンバーも堅実で完璧なアンサンブルを奏でている。まさにタイトルトラックに相応しい出来で、これ1曲のために本作を買う価値はある。前述のナジマ・アクタールがコーラスで参加しているのはこの曲。このコーラスが単なる+α以上に楽曲に貢献しているのだから驚き。とにかくとにかく素晴らしい曲なのだ。欲を言えばもう少しギターソロが長い方がいいかな。
3(Awol)は展開がモロJETHRO TULL。インタープレイは70年代には見られなかった円熟味がある。6(Hunt by Numbers)はライヴレパートリーに加えられたヘヴィな曲。このレベルならアンダーソンの声もまだまだいけそうである。
11(Bends Like A Willow)はシングルカットされたバラード気味の曲。でしゃばり過ぎずツボを抑えた中間部が現在のTULLを象徴している。

4(Nothing @ All)はピアノインストで、アンドルー・ギディングズの曲。ユニークな展開の7(Hot Mango Flush)はマーティン・バー作曲。バーの曲だからソロアルバムにあるようなメタルギターばりばりの曲を想像してたが、意外にもTULL風変態曲でびっくり。イアン・アンダーソン以外の人物が作曲でクレジットされるのは、カバー曲を除けば「UNDER WRAPS」以来だ。
2(Dot Com)や3(Awol)、4(Nothing @ All)の曲名から連想されるとおり、本作は歌詞のモチーフにインターネットを用いた曲が何曲かある。オフィシャルサイトを運営するギディングズのみならず、アンダーソンもインターネットを操るのだ。

そして「WARCHILD」の時期を彷彿とさせる14(A Gift of Roses)でアルバムは幕を閉じる・・・と思いきや、長いブランクの後、突然イアン・アンダーソンのナレーションが始まる。何とシークレットトラックとしてアンダーソンのアコースティックソロアルバム「THE SECRET LANGUAGE OF BIRDS」からタイトルトラックが収録されているのだ。

スケールの大きい曲が多かった前作「ROOTS TO BRANCHES」に比べると、本作はほとんどの曲が5分以下という(TULLらしくない?)短い曲で占められているが、どの曲も細部まで練られている。前作のようなインパクトは無いが、聴けば聴くほど味の出る一品である。
同時期にイアン・アンダーソンのソロアルバム「THE SECRET LANGUAGE OF BIRDS」も製作されていたが、キャリアが30年を超えながらこれだけのクオリティのアルバムを同時期に2枚も作り上げるとは・・・イアン・アンダーソン、今更ながら恐るべき男だ。
アルバム自体は、インディーズレーベルからのリリースが響いたのか思ったほどのセールスをあげることはできず歴代オリジナルアルバム最低の全英第44位、全米第161位に終わっている。

さて、アルバム全体を聴いて気になるのはやはりアンダーソンの喉である。往年の張りはまるでなく、ひたすらしゃがれている。もともとジジくさい声がウリだったのだが、ここまでいっちゃうと元も子もない。特にハードな曲にはミスマッチである。アルバムというのは1曲目が大事だと思うのだが、この点を考慮するとヘヴィな1(Spiral)ではなくバラードの2(Dot Com)を持ってくるべきではなかったか。ヘヴィな曲は中盤以降にもあるのに、どうにも1(Spiral)が浮いているように感じる。曲は良いので非常にもったいない。
しかしながらそうした欠点を補ってあまりあるのが、円熟したバンドアンサンブルである。前作のプロモーションツアー以来のメンバーであるから、一体感はバッチリだ。よく聴くとそれぞれのメンバーが地味ながら小技を繰り出しているのが分かるだろう。80年代以降のTULLは、なかなかバンドメンバーが固定化しなかったこともあり、この辺が衰え気味だったと思うのだが(デイヴ・ペグは例外。この人は変。)、"真のバンドアンサンブル"の復活は正直涙が出るほど嬉しい。特にギディングズの痒いところに手が届くようなキーボードアレンジが、アンサンブルに大きく貢献している。

本作から11(Bends Like A Willow)が限定でシングルカットされた。本作のアウトトラック"It All Trickles Down"が収録されている。これが意外と良い曲だったりする。


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