ROOTS TO BRANCHES

Chrysalis (UK)
東芝EMI TOCP-8660(廃)
ROOTS TO BRANCHES
  1. Roots to Branches
  2. Rare and Precious Chain
  3. Out of the Noise
  4. This Free Will / この自由なる意志
  5. Valley / 赤い谷の歌
  6. Dangerous Veils
  7. Beside Myself
  8. Wounded, Old and Treacherous / 傷つき、年老いてあてにはならない
  9. At Last, Forever / ついに、そして永遠に
  10. Stuck in the August Rain / 8月の雨の中
  11. Another Harry's Bar / またしても「ハリーズ・バー」

IAN ANDERSON
Vocals, concert flute, bamboo flutes, acoustic guitar
MARTIN BARRE
Electric guitars
DOANE PERRY
Drums
ANDREW GIDDINGS
Keyboards
DAVE PEGG
Bass Guitar (3,5,11)
STEVE BAILEY
Bass Guitar (1,6-9,10)

WRITTEN, PRODUCED AND ENGINEERED BY
IAN ANDERSON


-- Highly Recommended !

私的アオリ


1995年リリース。全英第20位。全米第114位。ファーストアルバム以来一心同体と思われたChrysalisレーベルにおける最後の作品。結論から書くと、傑作。

作風はIan Andersonのソロアルバム「DIVINITIES」の延長線上で、Andersonのフルートがアレンジの核になっている。また従来のトラッド路線がイースタン風味に拡散し、これまで以上にその消化に成功している。それぞれの楽曲の出来もすばらしく、とてもデビューから30年近いとは思えない。
私はこれがリアルタイムで最初に聴いたアルバムだったが、これが1968年にデビューしたバンドのアルバムであるということに大きな衝撃を受けたものだ。
デビュー以来ほとんどの曲を作詞作曲してきたIan Anderson・・・あらためてその尽きることのない才能に感服してしまう。

アップテンポな曲は少なくミドル/スローテンポの曲が多いが年齢によるバンドのポテンシャルを考えれば賢明な作曲アプローチだ。旧日本盤のライナーにあるとおり「枯れた味わい」という言葉が実にぴったり来る。30年演りつづけてきたからこそ出せるテイストが随所で味わえる -- Andersonのアコギは「間」の取り方が絶妙で、Martin Barreのエレキも実に渋く、Andy GiddingsとDoane Perryも堅実なプレイ(地味に聞こえるが細部でかなり凝っている)で支えている --
中でもBarreがメタリックに自己主張していないところが楽曲の良さを引き立てていると思う。
ただし、冷静に聴くとAndersonの喉の衰えは正直酷い。ツアー音源を聴いても分かるが、この時期は特に喉の調子が悪かった。(次作ではかなり持ち直しているが)

Reymond Benson氏がその著書「Jethro Tull (POCKET ESSENTIALS)」で「SONGS FROM THE WOOD以来の傑作」と評している通り、本作は代表作のひとつと言って過言ではないが、バンドには大きな転機が訪れていた。
まず、Dave Peggの脱退である。Peggは1979年の「STORMWATCH」ツアー以来、15年以上にわたってJETHRO TULLのリズムセクションを支えてきたが、一方でFAIRPORT CONVENTIONにも力を注いでおり多忙であった。これまでスケジュールの都合がどうしてもつかないときは愛息のMatt Peggが代打を務めていたのだが、本作ではIan Andersonはペグの穴を埋めるためPerryの友人であるアメリカ人セッションプレイヤー、Steve Baileyを起用、Peggはこれを知らされてなかったとしてツアーへの不参加を宣言したのである。
結局ツアーには「DIVINITIES」ツアーに参加していたJonathan Noyceが参加し新メンバーとなった。
Andersonには個人的な感情を押し殺してでもPegg父子をアルバムを通して起用して欲しかった。そうした方がアルバムとしての一体感はずっと増したと思う。楽曲やアレンジが素晴らしいだけになおいっそう悔しい。

さらにもうひとつの転機が、デビュー以来在籍していたChrysalisからの離脱だ。Chrysalisが大きくなったのはTULLのおかげなのであるが、80年代以降TULLのセールスが落ち込むにつれその関係もギクシャクしていたようである。とはいえ、次に英国でTULLが属するレーベル、PapillonはChrysalis傘下だったし(papillon=蝶、chrysalis=さなぎ)、その次のRandMはChrysalis時代のスタッフが関わっており、まったく関係を清算したわけではないようだ。

2006年リリースのリマスター盤は音質が格段に向上している。が、残念ながらボーナストラックは無し。また、なぜかAndy Giddingsのクレジットがない。(多分ミス)


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