All tracks written and produced by IAN ANDERSON
1993年の結成25周年はいくつかイベントがあったが、その一環でリリースされたのが本作。過去の未発表曲集である。 未発表曲集としては、同様の企画としてすでに1972年の「LIVING IN THE PAST」があるので、このアルバムに収められている楽曲はそれ以降のものということになる。
まず、Disc1はなんと幻のCHATEAU D'ISASTER TAPESの発掘である。CHATEAU D'ISASTER TAPESは1973年にフランスはエルヴィユ城(Le Chateau d'Herouville / ル・シャトー・デルヴィユ)でレコーディングされたが未完成のままお蔵入りになり、「A PASSION PLAY」と「WARCHILD」の原型となったマテリアル集である。すでに「20周年ボックス」で11(Scenario)から13(No Rehearsal)までが既発だったがが、このアルバムでその全貌がほぼ明らかになった。
なお「WARCHILD」収録の"Skating Away on the Thin Ice of the New Day"と"Bungle in the Jungle"もCHATEAU D'ISASTER TAPESの一部だったといわれる。
そして、さらに"Sailor"という未発表曲が残っているといわれており、これはトラックリスティングでは"Skating Away on the Thin Ice of the New Day"に続く曲だったらしい。
あと、8(Solitaire)は「WARCHILD」収録の"Only Solitaire"と同曲。
ただし、CHATEAU D'ISASTER TAPESは製作途中で放棄されたものであり、そのままでリリースするには未完成過ぎたため、この「NIGHT CAP」に収録するにあたってIan Andersonはフルートをオーバーダビングしている。
ボーカルを再録することも考えたらしいが、声の変化を考えてあきらめたらしい。賢明だ。
全体としてはラフだが、そこかしこに"A Passion Play"のフレーズが出てきており、まさに「A PASSION PLAY」の青写真である。完成度は高く、とてもレコーディング途中に放棄されたものとは思えない。全盛期JETHRO TULLの凄さがまざまざと、手に取るように伝わってくる。
特に完成度が高いのは11(Scenario)から13(No Rehearsal)であり、全体を聴くと、ここだけ「20周年ボックス」に先行収録されたのが良く分かる。
なお、メンバーは、Ian Anderson(Vocal、Flute、Sax、Acoustic Guitar)、Martin Barre(Electric Guitar、Narration)、John Evan(Keyboard)、Jeffrey Hammond-Hammond(Bass Guitar)、Barriemore Barlow(Drums)
5(Law of the Bungle Part II)の冒頭でMartin Barreが自己紹介しているが、"アイム・マーティン・バー"と発音しており、彼の姓は正しくは"バレ"ではなく"バー"と発音することが分かる。
戦慄の一枚。
Disc2は「WARCHILD」以降の未発表マテリアル。大きく、"「WARCHILD」期"、"「THE BROADSWORD AND THE BEAST」期"、"「CATFISH RISING」期"、"その他"に別れる。
ただし、その中にはリマスター再発の際にボーナストラックとして収録されることになる曲もあって、段々レア度が下がっている。
"「WARCHILD」期"は、1(Paradise Steakhouse)2(Sealion II)4(Quartet)で、特に素晴らしいのは2(Sealion II)。"SeaLion"のディファレントアレンジだが、雰囲気「A PASSION PLAY」に近い。徹底的にアヴァンギャルドなうえちゃんとユーモアもある、JETHRO TULLの真髄が凝縮された一曲である。ちなみに歌ってるのはJeffrey Hammondだったりする。
これら3曲は現在ではリマスター盤の「WARCHILD」に収録されている。
"「THE BROADSWORD AND THE BEAST」期"は、6(Crew Nights)7(The Curse)11(Commons Brawl)12(No Step)13(Drive on the Young Side of Life)16(Lights Out)。
12(No Step)16(Lights Out)ではIan Andersonがキーボードを弾いているが、これはPeter John-Vetteseが加入する前だったため。この時期のボツ曲はすでに「20周年ボックス」で一部日の目を見ており、これらはその残りということになる。
ただ、Vetteseのシンセがオフ気味で、気のせいかCHATEAU D'ISASTER TAPESと同じく、未完成度を補うためフルートがオーバーダブされているような気がする。
"「CATFISH RISING」期"は、3(Piece of Cake)5(Silver River Turning)8(Rosa on the Factory Floor)14(I Don't Want to Be Me)17(Truck Stop Runner)。「CATFISH RISING」に収録された曲よりこっちのほうが良いと思うんだが・・・。最初の3曲のキーボードはJohn "Rabbit" Bundrick。
で、"その他"。
9(A Small Cigar)は1975年のアコースティック小曲。なぜか当時まだ正式メンバーではなかったDavid Palmerがキーボーディストとしてクレジットされている。現在は「TOO OLD TO ROCK'N'ROLL:TOO YOUNG TO DIE!」のリマスター盤にも収録。
15(Broadford Bazzar)は「HEAVY HORSES」のアウトテイク(1978年)。ファンの間で非常に人気が高い隠れた名曲なアコースティックピース。タイトルの"Broadford/ブロードフォード"はAndersonの養鮭場にゆかりの深いスコットランドはスカイ島にある村。現在は「HEAVY HORSES」のリマスター盤にも収録。
10(Man of Principle)は1988年ということなのでたぶん「20周年BOX」の頃にレコーディングされたものだろう。
18(Hard Liner)は「ROCK ISLAND」のアウトテイク(1989年)。キーボードはIan Anderson。
なんだか「お蔵入りのお宝を一気に放出しました」というようなアルバムだが、まさに宝の山。マニアにはヨダレモノだし、一般のファンにも聴いていただきたい名曲が収まっている。必須アイテムです。
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