CATFISH RISING

東芝EMI TOCP-6872 (廃)
CATFISH RISING
  1. This Is Not Love
  2. Occasional Demons
  3. Roll Yer Own
  4. Rocks on the Road
  5. Sparrow on the Schoolyard Wall
  6. Thinking Round Corners
  7. Still Loving You Tonight / 貴方を愛しつづける今宵
  8. Doctor to My Desease
  9. Like A Tall Thin Girl
  10. White Innocence
  11. Sleeping With the Dog
  12. Gold-Tipped Boots,Black Jacket and Tie / 金縛りのブーツ、黒のジャケットとタイ
  13. When Jesus Came to Play / 私の名前はイエス、バンドのリーダー
Remastered Edition Bonus Track
  1. Night in the Wilderness
  2. Jump Start

Ian Anderson : Vocals, acoustic and electric guitars, acoustic and electric mandolins, flute and percussion.
Drums and keyboards on a couple of things: you figure it out.
Martin Barre : Electric guitar. As always.
David Pegg : Electric and acoustic bass guitars. Except when washing hair.
Doane Perry : Drums. Absolutely no tambourine.
Scott Hunter : Drums on "Still Loving You Tonight"
Andy Giddings : Keyboards on "This Is Not Love", "Rocks on the Road" and "Doctor to My Desease"
Matt Pegg : Bass guitar on "This Is Not Love", "Rocks on the Road" and "Still Loving You Tonight" (When father was washing hair)
John "Rabbit" Bundrick : Keyboards on "Sleeping With the Dog"
Foss Paterson : Keyboards on "White Innocence"

All songs written and produced by Ian Anderson.
Engineered by Ian Anderson & Tim Matyear. Assistance from Mark Tucker.
Recorded at Ian Anderson's studio, Woodworms Studio and Presshouse.
"This Is Not Love" and "Doctor to My Desease" mixed by John Williams and Geoff Foster at Air Studios.



私的アオリ


1991年発表。全英第27位。全米第88位。ブルース、アコースティック色が深まっておりバンドの円熟味がよく醸し出されているアルバム。ま、悪く言えば過去のカタログの中でもっともジジくさい作品。良くも悪くもレイドバックした楽曲が多く、ここは好みの分かれるところであろう。

この時期はハードロックブームが、ブルースブーム、アンプラグドブームへと変化してしてきた時期で、本作もそんな世の中の流れに乗ろうとした魂胆が見え見えである。人は流れに乗ればいい・・・と誰かが言ってたが、TULLにそれをやって欲しくなかった、としてファンの中にも本作を批判する声があるのも事実だ。

若造の付焼刃ブルースには負けんぞ、といったIan Andersonの心意気も分からんではないが、かつてコンセプトアルバムブームを「THICK AS A BRICK」で痛烈に皮肉った気概はどこへ行ってしまったのだろうか?

いや待て。各曲を良く聴いてほしい。こんな変態ブルースロックはない。やっぱりTULLはTULLだった。

1(This Is Not Love)は従来のハードロック路線。この路線はもう厳しいのではないかと思うところ、中間部で変態していてちょっと安心。
しかしやはり、やはり4(Rocks on the Road)、7(Still Loving You Tonight)のようなアコースティック曲がオヤジバンド、JETHRO TULLには良く似合う。特に4(Rocks on the Road)はこのアルバムの白眉で、Andersonのアコギ曲の中でも屈指の出来。
アコースティック曲は若いころから演っているのだが、この頃になるとずいぶんと毛色が違う。構成も複雑だし"味"がある。もはや若さに任せたパワーは当然期待できない。しかしそれを逆に年齢すなわち経験で補うという、ある意味「開き直りの美学」は個人的には大好きだ。それだけに8(Doctor to My Desease)のような若造りロックはかえって寂しいのである。

9(Like A Tall Thin Girl)は曲調、タイトルとも「STAND UP」収録の"Fat Man"の姉妹曲といえる。歌詞はDoarn Perryの体験談を元にしている。
10(White Innocence)は、はっきり言って「CREST OF A KNAVE」の"Budapest"の焼き直しだが、中間部のキーボードとフルートのクラシカルな絡みは一聴に値する。

アコースティック曲が多いが、当時同じくアコースティックブームに乗ろうとしていた他のバンドと一線を画していると思うのは、マンドリンの多用である。(BON JOVIとかも使ってたが、少数派だったと思う。)
やはり変態さは健在だ。とはいえ、全体的に物足りないのも事実。TULLの歴代作品の中では残念ながら下のほうの出来といわざるを得ないだろう。

さて、プレイヤーだが、本作には実に多くのミュージシャンが参加している。当時のJETHRO TULLの核はIan Anderson、Martin Barre、Dave Peggであったわけだが、Dave Peggが掛け持ち先のFAIRPORT CONVENTIONが忙しく、代わりに数曲で息子のMatt Peggが弾いている。(ツアーにも代役で参加することがあった)
ドラムはDoarn Perryが限りなく正式メンバーに近い立場にいたが、Andersonもドラムでクレジットされているところからして、ドラムマシンを使った曲もあるのだろう。例によってお試し期間っぽい。さらに7(Still Loving You Tonight)はScott Hunterが叩いている。

複雑なのがキーボードで、本作ではAndersonを除いて3人が弾いている。が、当時事実上の正式メンバーだったはずのMaart Allcockは全く弾いていない。FAIRPORT CONVENTIONとの兼ね合いも考えられるが、この後の展開から推測するに、Andersonに呼ばれなかった可能性が高い。そう、3人のキーボーディストは次期キーボーディスト候補生だったのである。

実際のところ、Andersonの本命はかつてのメンバーJohn EvanかPeter Vetteseだったわけだが、二人とも無理だった。
3人のうち、まずJohn "Rabbit" Bundrickだが、元FREEでTHE WHOのサポートメンバーとしても知られ、テクニック的には申し分なさそうだが、どうも性格だかライフスタイルだかがAndersonのお気に召さなかったようで脱落。
次のFoss PatersonはPeter Vetteseの推薦で参加。Vettese、そしてAndersonと同じくスコットランド人であったが、プレイがAndersonのお気に召さず脱落。現在はセッションミュージシャンとして大成。
そして最後のAndy GiddingsにはAndersonはいたく満足したようで、やや間をおいてついに正式メンバーとなる。

ツアーはまずAnderson、Barre、Pegg、PerryそしてMaart Allcockで行われるが、一段落したところで(契約が途切れたところで?)哀れにもAllcockは解雇。Andy Giddingsがついに正式選任キーボーディストとなる。

2006年リリースのリマスター盤はボーナストラックが2曲。両方ともシングル1(This Is Not Love)のB面である。14(Night in the Wilderness)はどうということのない曲だが、当時リリースされた日本盤「CATFISH RISING」はこの曲をボーナストラックとして収録していたため海外ではコレクターアイテムとなっていた。15(Jump Start)1987年のライヴ。メンバーはAnderson、Barre、Pegg、Perry、そしてキーボードはDon Aileyである。Aileyのやや大げさなキーボードワークは個人的には好き。
ただ、ボーナストラックは少なくないか。シングル4(Rocks on the Road)のB面の"Jack-A-Lynn"のデモとか本作のプロモ用ライヴとかも収録して欲しかった。


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