HEAVY HORSES / 逞しい馬

東芝EMI TOCP-67186 (Remastered/紙ジャケ)
Chrysalis 7243 5 81571 2 3 (Remastered/EU)

HEAVY HORSES
  1. ...And the Mouse Police Never Sleeps / ねずみ警察
  2. Acres Wild / 荒地
  3. No Lullaby
  4. Moths / 蛾
  5. Journeyman
  6. Rover / 流れ者
  7. One Brown Mouse / 茶色のはつかねずみ
  8. Heavy Horses / 逞しい馬
  9. Weathercock / 風見鶏
Remastered Edition Bonus Tracks
  1. Living in these Hard Times
  2. Broadford Bazaar

IAN ANDERSON : vocal,flute,acoustic and occasional electric guitars and mandlin
MARTIN BARRE : electric guitar
JOHN EVAN : piano and organ
BARRIEMORE BARLOW : drums and percussion
JOHN GLASCOCK : bass guitar
DAVID PALMER : portative pipe organ,other keyboards and orchestral arrangements

Solo Violin on Heavy Horses and Acres Wild Darryl Way

Music and Lyrics Composed by Ian Anderson
Additional material Martin Barre and David Palmer

Produced by IAN ANDERSON



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私的アオリ


前作「SONGS FROM THE WOOD」が英米で大ヒットしたJETHRO TULLは、精力的なツアーをこなし、勢いにのって翌1978年に本作をリリースする。全英第20位、全米第19位と前作には及ばないもののヒットした本作は、ファンの間では非常に人気の高い名盤である。

アルバム全体の構成も前作と近似しており、続編的な印象を受ける。ただ、個々の楽曲はやや地味になり小粒ぞろい。これにはバンド内部の状況が関係しているという。前作でいったん団結を取り戻したTULLであったが、再びメンバー間の関係が険悪になっていたらしい。
とはいうものの、本作ではその団結力の低下が好結果をもたらしているところもあると思う。楽曲のアレンジ不足は、逆に言うとアンダーソンの原曲の良さがそのまま生きているということでもある。
このようにシンプルな構成のおかげで楽曲が分かりやすいためでもあるだろう、傑作と評される前作よりも本作の方が好きというファンは多い。

1(...And the Mouse Police Never Sleeps / ねずみ警察)は変態アコースティック曲。オーケストラは生音でなくメロトロンに聞こえるが、どうだろう?
アンダーソンのマンドリンとゲスト参加のダリル・ウェイ(ex.CURVED AIRDARRYL WAY'S WOLF)のヴァイオリンが印象的な2(Acres Wild / 荒地)はTULL屈指の隠れた名曲。サビに出てくる"the Winged Isle"とはIsle of Slye - スコットランドのスカイ島のこと。ここにはイアン・アンダーソンの養鮭場があるためか、いくつかのTULLの曲の題材になっており何かと関わりが深い。トラッドな仕上がりはいかにもJETHRO TULLだ。
うって変わって3(No Lullaby)はJETHRO TULL風変態ハードロック。マーティン・バーのギターがぐっと存在感を増す。ヘヴィなリズム隊にも注目。
4(Moths / 蛾)はマニアに人気のアコースティック曲。トーンをぐっと落とし一層しゃがれたアンダーソンのヴォーカルが渋い。
珍しくベースがリフを奏でる5(Journeyman)は、曲調は4(Moths)と同系統だがこちらはエレクトリック。
6(Rover / 流れ者)はアコギのアルペジオが印象に残るなかなかの佳曲。
7(One Brown Mouse / 茶色のはつかねずみ)は前作の"Jack-in-the-Green"と同系統のアコースティック曲。アンダーソン独演会だったあの曲と違い、こちらはバンドの演奏。デイヴィッド・パーマーのポータティヴパイプオルガンの活躍が目立つ。

そして8(Heavy Horses)はJETHRO TULL屈指の名曲だ。このアルバムを名盤としているのはひとえにこのタイトルトラックと言っても過言ではない。9分近くに及ぶこの曲はまさにTULLの代表曲の一つであり、個人的には5本の指に入る名曲だと思う。TULLを一曲聴かせてくれと言われたら、私は"Aqualung"でも"Locomotive Breath"でもなく、この"Heavy Horses"か"SeaLion(I or II)"を挙げたいくらいだ。この曲はプロモフィルムが制作され、20周年ヴィデオに収録されている。ただ、ライヴでは完全に再現できないのか短縮して演奏している。
中間部ではダリル・ウェイのヴァイオリンソロもあるが、ラストのオーケストレーションの盛り上がりは凡百のシンフォニックロックバンドには真似出来まい。デイヴィッド・パーマー大活躍である。
9(Weathercock)は前作の"Fire at Midnight"と同系統。やはりアルバム全体の構成まで前作とそっくりだ。

全体的には前作の水準を十分に維持しているアルバム。お薦め。

さてリマスター盤についているボーナストラック。どちらも本作のアウトテイクだが、10(Living in these Hard Times)は「20周年BOX」にて、11(Broadford Bazaar)は「NIGHT CAP」にてそれぞれ既出。後者は明らかに未完成だが、メロディがよく、アンダーソンの弾き語りも堪能出来て嬉しい。なお、"Broadford"とは前述のスカイ島にある町の名前だ。風光明媚な田舎町である。

Photo Copyright j-tull.jp
Broadfordの一風景


Note:
#日本盤#紙ジャケはエンボス紙で再現。
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