SONGS FROM THE WOOD / 神秘の森〜ピブロック組曲

東芝EMI TOCP-67185 (Remastered/紙ジャケ)
Chrysalis (Remastered/EU)
Mobile Fidelity Sound Lab/EMI UDCD 734 (Gold CD/U.S./廃)

SONGS FROM THE WOOD
  1. Songs from the Wood / 大いなる森
  2. Jack-in-the-Green / 緑のジャック
  3. Cup of Wonder / カップ一杯の不思議〜クリムゾン・ワンダー
  4. Hunting Girl / 女狩人
  5. Ring Out, Solstice Bells / 至高の鐘
  6. Velvet Green / 優しい緑
  7. The Whistler / 森の笛吹き
  8. Pibroch(Cap in Hand) / ピブロック組曲
  9. Fire at Midnight / 真夜中の灯
Remastered Edition Bonus Tracks
  1. Beltane
  2. Velvet Green / 優しい緑 (Live)

IAN ANDERSON -- Vocals,Flute,Acoustic guitar,Mandolin and Whistles
MARTIN BARRE -- Electric guitar and Lute
JOHN EVANS -- Piano,Organ and Synthesisers
BARRIEMORE BARLOW -- Drums,Marimba,Glockenspiel,Bells,Nakers and Tabor
JOHN GLASCOCK -- Bass guitar and Vocals
DAVID PALMER -- Piano,Synthesiser and Portative Organ

Jack-in-the-Green all instruments played by IAN ANDERSON

Additional material by DAVID PALMER and MARTIN BARRE

Arrangements by JETHRO TULL

All songs produced and written by IAN ANDERSON



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私的アオリ


デビュー時よりストリングスアレンジャーとしてバンドを裏から支えていたデイヴィッド・パーマーが正式メンバー(キーボーディスト)となり、6人編成で製作されたアルバム。
1977年にリリースされ、全英第13位、全米第8位と、ブリティッシュロック低迷の時期にあってセールス的にも大成功を収めた本作は、イアン・アンダーソンがこのころ田舎へ引っ越したこと、また同じChrysalisレーベルに属していたSTEELEYE SPANとの交流もあり、ブリティッシュトラッド/フォークへの傾倒を深めた作品となっている。
また歌詞の面でもアンダーソンが得意としていたブラックユーモアではなくイングランドやスコットランドの自然や民話等をテーマにしており、まさに、名実ともに、真に、「ブリティッシュ」している。

JETHRO TULLにはこれ以前からもトラッドの影響があったが、それはアルバム中の一部の曲にとどまっていた。しかし本作では全曲がトラッド路線で、トラッド路線の代表作とされる所以である。
また楽曲の構成も複雑化しており、特にリズム面のアレンジにかなり凝りだしている。
実際この1978年前後のTULLのTULLの音楽面での充実振りは特筆すべきもので、本作をフェイヴァリットに挙げるファンは数多い。

アルバムリリースに先立ち1977年末に5(Ring Out, Solstice Bells / 至高の鐘)をクリスマス向けEPとしてリリースし、初期のごとくシングルヒットを狙ったが、全英第29位と残念ながらマイナーヒットに終わった(他の曲は"Christmas Song""Pan Dance""March, the Mad Scientist")。
久方ぶりにTop of the Popsにも出演したらしい。とにもかくにも、イアン・アンダーソンはかなりやる気だったようだ。

イアン・アンダーソンだけでなくバンドもずいぶんとやる気を取り戻しており、特にマーティン・バーとデイヴィッド・パーマーは作曲への貢献の高さからAdditional Material by〜とクレジットされている。またアレンジのクレジットもバンドに帰されている。

アルバム冒頭1(Songs from the Wood / 大いなる森)は、ベスト盤にも収録される文句なしの代表曲。凝ったアレンジ、秀逸なフルートソロとこの時期のJETHRO TULLのエッセンスが凝縮されている名曲だ。
2(Jack-in-the-Green / 緑のジャック)はイアン・アンダーソンが全ての楽器を弾きこなしたアコースティック小曲。この曲もライヴでよく取り上げられる名曲。
1(Songs from the Wood / 大いなる森)と同じくきわどいアレンジの4(Hunting Girl / 女狩人)はジョン・グラスコックとバリー・バーロウの鉄壁のリズム隊に注目してほしい。ヘヴィにツーバスを駆使するバーロウもさることながら、THE GODS等で着実にキャリアを積み上げたグラスコックの存在感が光る。
プロモフィルムが製作された7(The Whistler / 森の笛吹き)は、米でシングルカットされたが59位に終わった。映像は「20周年ビデオ」で見ることができる。タイトル通りアンダーソンがTin Whistleを奏でるポップな曲だ。
8(Pibroch(Cap in Hand) / ピブロック組曲)は、スコットランドの民族楽器バグパイプで演奏されるトラッド曲にインスパイアされて作れられた。マーティン・バーの重厚なギターリフが印象的。

さてボーナストラックである。
10(Beltane)は次作「HEAVY HORSES」のためにレコーディングされたが結局使われなかった曲。「20周年BOX」で日の目を見た。イアン・アンダーソンが久方ぶりにサックスを吹いているのがレア。
11(Velvet Green / 優しい緑)はロンドンでのライヴ。BBCのテレビ番組「Sight&Sound」に出演したときの音源で、これも「20周年BOX」にて既出。
どうもボーナストラックがぱっとしない。7(The Whistler / 森の笛吹き)のプロモフィルムをエンハンストで入れてほしかった。

全体を聴いていただければお分かりになると思うが、トラッド路線とはいえアコースティック曲ばかりというわけではない。あくまでもロックである。
やはり捨て曲無しの名盤であり、「AQUALUNG」や「THICK AS A BRICK」でTULLに興味を深めた方は、次はこのアルバムをお勧めする。ブリティッシュトラッドがお好きな方はこのアルバムからTULLに入門されると良いだろう。

痺れるほどの大傑作である。


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