THICK AS A BRICK / ジェラルドの汚れなき世界

Chrysalis 7243 8 57705 2 4 (Remastered/EU)
東芝EMI TOCP-65883 (with bonus tracks/Remastered/紙ジャケ)
THICK AS A BRICK
  1. Thick As A Brick / ジェラルドの汚れなき世界
  2. Thick As A Brick / ジェラルドの汚れなき世界
Remastered Edition Bonus Track
  1. Thick As A Brick (Live at Madison Square Garden 1978)
  2. Interview with Jethro Tull's Ian Anderson, Martin Barre and Jeffrey Hammond

Written by Ian Anderson and Gerald Bostock
Arranged by JETHRO TULL
Orchestra arranged and conducted by David Palmer

Ian Anderson sang and played Flute,Accoustic Guitar,Violin,Sax,Trumpet
Martin Barre played Electric Guitar,Lute
John Evan playd Organ,Piano,Harpsichord
Jeffrey Hammond-Hammond played Bass Guitar and spoke some words
Barriemore Barlow played Drums,Timpani,Percussion

(Prodused by Ian Anderson)


40th Anniversary Special Edition CD+DVD / MP3

Remastered Edition CD / MP3

40th Anniversary Edition Analog [TAAB 1&2]

-- Highly Recommended !


私的アオリ


Really don't mind if you sit this one out.
/ これを最後まで読んでもらわなくても一向に構わない。

JETHRO TULLの代表作は何か?という問いに10人中8人のファンはこう答えるだろう -- 「THICK AS A BRICK / ジェラルドの汚れなき世界」

脱退したクライヴ・バンカーに代え、旧友のバリー・バーロウを迎えたJETHRO TULLは、手始めにEP「LIFE IS A LONG SONG」をリリース。これは英で第13位のヒットとなる。(後に編集盤「LIVING IN THE PAST」に丸々収録される。)
バーロウはツーバスを用いたヘヴィなドラミングを駆使する巧者で、前任のバンカーよりもテクニックは上。その彼の加入が、バンドの音楽性のプログレ的進化に拍車をかけた面があると思う。
そしてまた、彼が加入して脱退する(80年)までが一般的にはバンドの全盛期とされるのである。

さて1972年にリリースされ、全英第5位、全米第1位に見事輝いたトータルコンセプトアルバムの傑作として有名な本作、アナログの名残で2部に分かれているが実質1曲しかないアルバムである。そして、ジェラルド・ボストックなる8歳の天才詩人が書いた詩にイアン・アンダーソンが曲をつけた、という体裁をとっている。
アナログ時代は新聞紙をかたどったジャケットが物議をかもした。日本版紙ジャケは忠実に再現してあるが、リリース25周年を記念して限定リリースされたリマスター盤ではそのまま新聞として再現されている。
で、新聞の内容だが・・・ギャグである。いわゆるブリティッシュ・ユーモアであり、モンティ・パイソンなんかのそれに近いものがある。
・・・つまり、この新聞は架空のもの、ボストックくんも架空の人物である。ボストックくんはイアン・アンダーソン自身なのだ。でもこんなこと新聞の内容をよく読めば一目瞭然である。(アレンジャーのデイヴィッド・パーマーやエンジニアのロビン・ブラックが関係ないところで登場しているし)。
評論家やファンの一部にはまだネタだということが気づいてない人がいるみたいだが・・・

結局のところ、このアルバムは当時流行だったコンセプトアルバムに対するJETHRO TULLによる皮肉であった。前作「AQUALUNG」が意に反してコンセプトアルバム扱いされたことも念頭にあったようだ。
それを今まで本物のコンセプトアルバムとして延々もてはやされているのはTULLとしてはまったく不本意だと思われる。(まあ客観的に見れば確かにコンセプトアルバムだし、最初はそう思われるのも狙いの一つだったのだろうが)

楽曲について話を移そう。前述の通りこのアルバムは実質1曲で構成されている。静かなアコースティック弾き語りで始まり、静と動のすさまじい起伏の末、再びイントロと同じアコースティックパートに戻り幕を閉じる。
バンド全員がアレンジに力を入れたそうで、絶妙なアンサンブルで最後まで一気に聴かせてくれる。とにかく、まったく無駄やスキがない。ハイレベルな演奏力、完璧なまでの楽曲構成、皮肉に満ちた歌詞(アンダーソンの幼児体験がもとになっているとか)、どれをとっても当時の、いやロック史に残る他の一流バンドと比べて遜色がないといえる。この時期世界的にTULLの人気がピークに達していたのもうなずける。大傑作だ。

デジタルリマスターにより音質が格段によくなった。例えば前半部の後半のパートにおける貴重なアンダーソンのヴァイオリンなど音の輪郭がはっきりし、本作の魅力が倍増したと思う。

さてボーナストラック。クレジットに従えば78年のマジソンスクエアガーデンでのライヴということで「20周年ヴィデオ」に収録のものと同テイクだと思っていたのだが、微妙に違う。まずMCは同じ、これは良い。多少のエフェクトがかかっているのも許す。だが特にアンダーソンのヴォーカルがところどころ20周年ヴィデオのものと違う。何で?。ミキシングの段階で他のライヴテイクを持ってきたのだろうか。(映像の方は衛星中継だったのでごまかせないはずだ。)
ちなみにこのときのメンバーはイアン・アンダーソン、マーティン・バー、ジョン・エヴァン、バリー・バーロウ、デイヴィッド・パーマー、トニー・ウィリアムズ(病身のジョン・グラスコックの代打)である。

なお"thick as a brick"とは、"おバカさん"という意味のスラング。


Note:
#旧盤CDでは曲が終わった直後にアンダーソンのため息(一瞬)があった。
戻る

j-tull.jp
Copyright 2003 j-tull.jp